肩の痛みや関節可動域は『関節注射』で良くなるのか?について研究を紹介!

目次

「肩が痛い…」は関節注射で良くなる?

「寝ると痛い…」はどんな影響で起きている?

肩関節 解剖
  • 肩峰下−上腕骨頭間距離の狭小化(赤矢印
  • 肩峰下圧の上昇

仰向けで寝ている時 や 痛みのある肩が下側になった状態で寝た時に上腕骨が上方向に圧をかけることで痛みが強まります。

※座っている時や立っている時には、重力によって腕が引っ張られているため、上方向への圧はかかりにくくなっています。

関節注射をするとどこまで変わる

関節注射あり(関節注射+リハビリ) と 関節注射なし(リハビリのみ) ではどのような変化の違いがあるのか研究資料がありましたのでご紹介!

※この研究は「関節注射をすれば治る」とか「関節注射をしなければ治らない」ということを明らかにしたものではありません。関節注射をするとどのような影響があるのかを経過観察してくれたものになります。

運動時の痛み

運動時の痛みは、関節注射あり(オレンジ線) で治療開始〜1ヶ月後までの期間において顕著に低下しています。

この期間で変化量が大きいため、関節注射は治療早期に効果が出やすい可能性を示しています。

一方で、治療早期に効果があると言えるだけで、1ヶ月〜3ヶ月後までの変化量は関節注射の有無で違いはありません。

関節可動域

関節可動域は、関節注射あり(オレンジ線)と関節注射なし(青線)で違いはありません。

外旋の可動域で1ヶ月時点で差があるように見えていますが統計的には差がなく、3ヶ月後にはその差は小さくなっているため気にする必要のない程度であると思われます。

他にも、エプロンを腰の後ろで結んだり、ブラジャーのホックを後ろで付けるような結帯動作を評価項目としていますが、こちらも差はないようです。

肩関節可動域 経過観察

不眠

この研究では、痛みが睡眠にどれぐらい影響しているのかということや、治療開始時から3ヶ月後までの不眠状況の経過観察を右図を用いて評価しています。

アテネ不眠尺度

● 睡眠状況を評価する夜間睡眠スコア5項目

① 寝つき、② 夜間中途覚醒、③ 早朝覚醒、④ 総睡眠時間の充足度、⑤ 睡眠の質の満足度

● 睡眠と日中の疲労を評価する日中機能障害スコア3項目

① 日中の気分、② 日中の活動度(身体的・精神的)、③ 日中の眠気

これらの項目を過去1ヶ月少なくとも週3回以上経験したものについて0〜3点で調査します。

治療経過とともに不眠状況は改善する傾向がありましたが、関節注射あり(オレンジ線)と関節注射なし(青線)で違いはなかったようです。

不眠 経過観察

この研究のまとめ

前置きしたように、この研究は「関節注射をすれば治る」とか「関節注射をしなければ治らない」ということを明らかにしたものではなく、関節注射によって治療経過にどのような影響を及ぼしているのかを観察しています。

この研究から

  • 関節注射をした方が早期に運動時の痛みは改善する。
  • 関節可動域の改善には、関節注射の有無で差はない。
  • 関節注射の有無で、夜間の痛みに差はない。

つまり…

関節注射の有無にかかわらず、リハビリを継続することで運動時痛、関節可動域、不眠は改善される。

「日常生活の動作で肩の痛みが強く、できるだけ早く痛みを減らして欲しい」というなら、関節注射を打つことも検討してみては良いと思いますが、時間が経過すると注射の有無に差はありません。

一番大事なことはリハビリを絶えず継続していくということです。

痛みに悩むことのない程度まで改善させようと思われているなら、少なくとも3ヶ月程度は継続してくださいね!

こちらの研究にご興味がおありの方は、こちらの文献をご覧ください。

《参考文献》

伊藤 創 他:夜間痛を有する肩関節疾患保存治療例に対する理学療法効果と関節注射による影響ー理学療法学 第47巻 第5号 p431-440(2020)

ワンポイント エクササイズ

肩関節の外旋可動域を改善させよう!

特に、肩関節の外旋可動域をしっかりと改善させましょう。

肩関節 運動方向

肩関節外旋筋トレーニング(1stポジション)

《必要物品》

水が入ったペットボトル(500ml)、枕、バスタオル、

《トレーニング》

【手順1】 床やベッドの上で横向けで寝る(痛みがある肩は上側)

【手順2】 肩から肘を体側に沿わせた状態で肘を90度曲げ、脇にバスタオルを挟みます。

【手順3】 500mlペットボトルを手で持ち、お腹の前から天井方向に持ち上げます。

※バスタオルは常に挟んだ状態で行いましょう。

※肘から手(前腕部分)が床面と平行になるところを目指します。

無理のない範囲で行ってください。

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